弧月(KOGETSU)を立ち上げようと思ったきっかけは、初めて明石海峡のタイラバ船に乗った日の失敗でした。
その船では、PEラインは0.8号を150m巻いてくるように指定されていました。
当時の私は、PEラインのブランドにはまったく無頓着でした。ネットで探すと、有名メーカーの製品よりかなり安い中国製のラインが見つかりました。
「シマノなんて、ブランド料が高いだけだろう。中華ラインで十分」
正直にいうと、そんなふうに考えていました。
指定どおり0.8号と表示されたラインを買い、リールに巻いて、初めてのタイラバへ向かいました。

なぜか、私だけ底が取れない
釣りを始めて、すぐにおかしいと感じました。
私だけ、なかなか底が取れません。
タイラバは、着底を確認して巻き上げる釣りです。ところが、ラインが明石海峡の激流に流され、どこまで落ちているのか分かりにくい。周りの人は普通に釣りをしているのに、私のラインだけ大きく流されていきます。
やがて、ほかの人の仕掛けと絡む「お祭り」まで起こしてしまいました。
そして、船頭さんから言われました。
「太く見えるけど、本当に0.8号?」
私は答えました。
「0.8号です」
心の中では、小さな声で付け加えていました。
――中華ですけど(汗)。
あらためて周りのお客さんのラインと見比べると、確かに私のラインは少し太く見えます。商品には0.8号と書いてありましたが、同じ0.8号を使っているはずのほかの人とは、明らかに様子が違いました。
そのうえ、途中でラインが高切れしてしまいました。
初めてのタイラバは、さんざんな結果でした。
船の中では、多い人は二桁の魚を釣っていました。私はまともに釣りをすることすらできず、悔しさだけが残りました。
お金をかけるところを間違えた
帰ってから考えました。
「ああ、やはり、お金をかけるところには、きちんとかけないといけないんだ」
次の釣行では、シマノの「タナトル」を購入しました。
同じ0.8号でも、使ってみると明らかに違いました。前回のように大きく流されることがなく、底もきちんと取れます。
残念ながら、その日の釣果はゼロでした。
ラインを替えたからといって、すぐに魚が釣れるほど甘くはありません。
それでも、前回とは違い、少なくとも自分が何をしているのかは分かりました。底を取り、巻き上げ、もう一度落とす。ようやく、タイラバという釣りができるようになったのです。
そして3回目の釣行で、ようやく真鯛を釣ることができました。

あの一匹は、本当にうれしかったです。
中国製が悪い、という話ではなかった
ここまでなら、「安い中国製ラインで失敗したので、これからは有名な日本ブランドを買うことにした」という話で終わります。
しかし、その後もPEラインについて調べ、実際にいくつか使っていくうちに、少し考えが変わりました。
中国製のラインにも、日本で0.8号として使われている太さから大きく外れず、強度にも問題のない製品があります。現在、私自身もそのようなラインを使い、道具への不安なく釣りを楽しんでいます。釣果も安定するようになりました。
つまり、「中国製だから駄目」なのではありません。
問題は、同じ0.8号と表示されていても、実際の太さや強度、品質のばらつきが、商品によって違うことです。そして購入する側には、パッケージを見ただけでは、その違いがなかなか分かりません。
安いラインの中にも、良いものはある。
しかし、どれが良いのか分からない。
それなら、自分で探し、自分で測り、その中から選べばよいのではないか。
そう考えたことが、弧月を立ち上げようと思った直接のきっかけです。
安いラインではなく、測って選んだラインを
弧月が目指しているのは、単に「安い中国製PEライン」を仕入れて販売することではありません。
候補となるラインを実際に取り寄せ、太さ、重量、直線強度、結束強度、編みの状態、色落ち、そして測定値のばらつきを確認する。そのうえで、価格と品質のバランスがよいものを選びたいと考えています。
そして、測定して終わりではありません。その実測値をこのWebサイトで公開し、購入を考えている方が自分で確認できるようにします。
できるだけ測定条件も明らかにし、平均値だけでなく、最小値やばらつきも公開する。
有名ブランドだから信じてください、でもない。
安いから一度使ってみてください、でもない。
「実際に測った結果を見て、選んでください」
そんなPEラインを作りたいと思っています。